緊急事態宣言延長—アンコロ・シフトを考える

アンとコロの「アンコロ・シフト」。鳥たちは密閉、密集、密接の3密を自然に避けているのかも。

5月4日、緊急事態宣言の延長が決まった。前日5月3日18時点の 1日の感染者数(PCR検査陽性者)は200人、死亡者数は18人。これまでの累計の死亡者数523/感染者数15,729は3.3%と3%を超えている。最近の相次ぐ院内感染の報道やマスクや防護服の不足が未だ解消されない医療現場のひっ迫状況を考えれば、とても緊急事態宣言解除とはいかない。

逆に、 緊急事態宣言解除の条件を勝手に推測すれば、全国で1日の感染者100人未満、死亡者数10人未満が2週間以上続き、医療現場の人員、病床、マスクや防護服等の物資のひっ迫状況が解消されることということになろう。うまく行けば、今月中の宣言解除の可能性がないわけではないだろうが、発症者がPCR検査をなかなか受けられない、「アベノマスク」が未だ届かない(我が家は届かなくても別に困らないが)状況を見ると心配にならざるを得ない。

今月末に緊急非常事態が解除されたとしても、ウィルスの変異、再燃、人の流れが再開することによる新たなクラスターの発生、感染爆発、医療崩壊の可能性は依然残される。レムデシビルやアビガンよりも効果の高い特効薬やワクチンが開発され使用できるまで少なくとも半年以上は、新型コロナウイルスに対抗する社会の態勢を続ける必要がある。アンチ・コロナ・シフト、略して「アンコロ・シフト」である。

専門家会議も「新しい生活様式」を提案しているが、新しい生活様式のためには、人と人、人と機関、機関と機関の関係、つまり社会の仕組みをシフトしていくことが必要である。では、どんな方向にシフトすべきか。とりあえず、次の4つを提案したい。

①多様と分散によるゆとりと間づくり

人々が3密を避けるためには、多様な時間と空間を使って分散して棲み分けることが必要だ。Stay Homeの呼びかけにみんなが従うことで、住宅地のスーパーや公園などに3密が発生した。さらに買い物や散歩まで規制すれば、集合住宅がクルーズ船と同様にクラスター発生装置になりかねない。時間と空間を広く使いながらコンパクトに暮らすほうが間が生まれる。選択と集中は密度や効率を上げるにはいいが、いま求められているのは多様と分散による適度なゆとりと間づくりである。店舗、飲食店、サービス施設、交通機関などの営業時間や便数を制限するよりも、むしろ多様な営業形態やプライシングなどにより利用の分散化を図りたいところである。

②感染制御エリアの創出と拡大

すでにクラスター対策の限界が見え、市中から感染者を見つけ出して早期に隔離して感染を防ぐ戦略への転換が求められているが、PCR検査数は思うように増えない。であれば、むしろ感染者を境界で検査し、入場させない感染制御エリアを創出し、そのエリアを少しずつ広げていくのはどうか。感染制御エリアには「施設型」と「地域型」が考えられる。施設型は工場、オフィスビル、店舗、スポーツ施設、図書館、公共施設等など。初回入場時にPCR検査を義務付け、 毎回利用時に検温するとともに、 定期的にPCR検査や抗原・抗体検査を行い、感染者の入場規制・隔離を行う。施設内の感染制御を医療施設並みに行い、安全安心な事業活動や施設利用を実現していく。地域型では自治体ないし地区ごとにゲート的な駅やバスターミナル、航空、港湾施設での検温や検査を義務付けることで感染者の入場規制・隔離を行っていくことが考えられる。

③セーフティネットの張り直し

コロナ禍に伴う営業自粛、休業要請は事業活動と就業・雇用に大きな打撃を与え、多くの企業倒産と失業を招き、生活困窮を訴える悲鳴が社会のあちこちから聞こえてくる。アベノミクスが演出してきた経済成長の陰で医療やセーフティネットが弱体化していたことを改めて思い知らされた感がある。阪神淡路や東日本大震災、相次ぐ風水害で日本人のクライシス対応能力は向上してきたように思っていたが、新型コロナウイルスの脅威は、その対応能力を超えている。特に、この間のアベノミクスによる社会格差、経済格差の拡大は、弱者に急激に大きなダメージを与える。もちろん一律10万円の給付が格差是正に寄与するはずはない。非正規労働者、学生アルバイト、ひとり親、外国人労働者、特にネットカフェ難民など住処のない人々に対するセーフティネットの弱さが露呈した。アンコロ・シフトには弱者に対するセーフティネットの張り直しが欠かせない。

④中台韓との連携協力強化

新型コロナウイルスの脅威はまず中国武漢を襲ったが、日本への脅威はむしろ中国からの第一波よりも、欧米からの第二波がはるかに上回った。欧州や米国が未だ大量の感染者や死亡者を出す中で、中国、台湾、韓国がすでに終息を迎えつつることは隣国として非常に心強いことである。隣国の防疫策は我が国に多くの教訓をもたらすとともに、マスクや防護服等も隣国に依存ていることを今回思い知らされた。安倍政権下の我が国は安全保障を日米安保に過剰に依存しているが、トランプ大統領はこのパンデミックの緊急事態にWHOの拠出金を停止するという。今後アフリカ等で感染拡大が懸念される中で、その対策支援は中国に期待せざるを得ない。アフリカ等での感染拡大が長期化すれば東京五輪・パラリンピックは中止に追い込まれかねない。新型コロナウイルスに対する特効薬やワクチン開発も中台韓の治験の共有などで開発・承認期間の短縮化を図っていくことが期待される。安全保障も日米安保から中台韓と連携した国連安保にシフトしていくことが必要だろう。