ノルドでは、3.11の東日本大震災から4カ月目を経過した7月上旬に震災後の生活意識・行動の変化を訪ねるアンケート調査を実施した。対象は全国の20歳から69歳の男女個人1,000人(有効回収)である。
調査結果の概要は、すでに7月21日にリリースしているが、震災後価値観や行動が「変わった」人は61.9%にのぼった。2割強(21.9%)が現在も変わったままだという。
この震災後の価値観や行動の変化の内容については自由回答でも尋ねているので、ここではそれを具体的に見ていこう。
最も多く見られたのは、リリースでも「低燃費生活」志向の拡がりとして指摘した節電などの省エネや節約志向である。一方で、いつ何が起きるかわからないから、あまり我慢しないという「後悔しない生活」志向も見られる。【節電】
- 節電にかなり神経質になりました。使ってないコンセント抜く。冷蔵庫の中を整理。エアコンをいつもの年より使わないようにしています。
- コンセントタップや扇風機による節電と自然の通風を意識する。こまめな消灯。必要以上の洗濯を控える。
- 震災前は、節電など感心なく過ごしていたが、震災後はエアコンの使用は必要最低限、温度設定も見直すようにした。効率よくするため、扇風機を併用するようにもした。
- 節電に対する考え方が変わり、家・会社でも積極的に節電をするようになった。
【節約志向】
- 旅行をさしひかえた。節約するようになった。
- 震災の影響で収入が減り家計にもすごく響いているので、常に節約を余儀なくされている。結果、節電、節水につながっている。
- 無駄なものは買わない。
- 外食をひかえるようになった。
- 不要なものはもたない。
- 被災地の方を思って、できるだけ質素倹約を心がけるようになりました。
- 購買意欲が弱くなった。無駄遣いしないようにしている。
【後悔しない生活】
- 毎日後悔のないように生きるようにしたい。したいことは何でも出来る時にしておく。
- 毎日大切に過ごす事。
- 今日すべきことは、今日中に消化する。
- いつ何が起きるかわからないので、あまり我慢をしなくなった。
- いつ災害に巻き込まれて死んでしまうか分からないので、やりたいこと・楽しいことをどんどんやっていきたいと思うようになった。我慢をしたくない。
大震災を体験して、普段からの防災対策を心がけるようになったという回答も当然のことながら、少なくない。小まめな給油、ペットの対応などイメージするものもより具体的になつている。【普段からの防災対策】
- 防災用品を準備したし、家族との連絡先を確認した。
- ニュージーランド地震の後すぐに非常用持出し袋を準備していたが、震災後さらに意識が高まった。
- 天災や事故に対する考えがシビアになり、家族でその予防や対処について話し合った。
- 自然災害はどこであるかわからないので、子供と離れているときは場所をはっきりしておいたり、家族が離れて非難した時に最低限の事(ラーメンが作れたり)が一人でも出来るように練習をさせた。
- 日頃からの備えをするようになった。(食料や水を普段から確保、電池等やろうそくを揃えておくなど)ガソリンのメーターが半分になったらすぐに給油する。(以前は、ギリギリまで給油しなかった)
- 津波への備えも考えるようになった。
- 災害を意識し、常にイメージトレーニングするようになった。
- 防災用品を用意したり、ペットを飼っているので、ペットに関しても、何か起きたときの対応をしっかり考えるようになった。
注目したいのは、この機会に「大切なものを再認識」し、平凡な生活のありがたさに感謝する気持ちになったという変化である。これは、「家族などとの絆を大切にする」や「人のためになりたい」「被災地を応援したい」「社会を変えたい」という意識や行動の変化にもつながっている。
私は、これを「SRシェアリング」志向と呼び、3.11後の国民の大きな意識や行動の変化の特徴として指摘したい。「SRシェアリング」とは、社会的責任(Social Responsibility)の共有ないし分有という意味である。これまで、政府や企業に任せたり、押し付けてきたりした社会的責任を個人レベルでも積極的に意識し、共有ないし分有して自らできる役割を果たしていく、そんな意識や行動の変化への転機にこの大震災がなったと思いたい。【大切なものの再認識・感謝】
- 平凡な生活がいかに幸せかを実感。
- 日常の雑事が苦痛に感じなくなった。あたりまえをありがたく感じるようになった。
- 普段の生活をするために、たくさんの人が働いていることを再認識した。たとえば、電車が動くことや、スーパーなどで買い物をするために、製造・運輸・店舗スタッフなどが動くことでできている。なので、それがあたりまえと思ってはいけないなと思うように。少し電車が遅れたくらいでイライラしたりしなくなった。電気・水道・ガスも大切に使いたいと思うようになった。また、何をしたくて生まれたのかをもう一度深く考え、それを全うしたいと強く思うようになった。
- 電力不足で、便利な生活がどんなリスクと犠牲によって支えられていたかに気づいた。
- 自分にとって誰が大事か、何が大切かを改めて考えた。
【家族などとの絆を大切に】
- 家族や地域の絆を深めることを心掛けるようになった。
- 隣近所との付き合いを以前にも増して密に大事にするようになった。
- 恋人や家族との関係をそれまで以上に大事にするようになった。
- 就職先の選定について家族と近い場所にしようとしている。
- 周りの人との関わりがあってこそ自分自身や家族があることを思い知った。
【人のためになりたい、被災地を応援したい、社会を変えたい】
- 人のためになりたいと思う。
- ボランティア活動を始めたこと。
- 被害者に対する全面的な支援の気持ち.増税に反対する代わり毎月一定額を寄付。
- 街頭寄付金などはほとんどしなかったが、ある程度進んでするようになった。毎日神様にお祈り(震災被災者の皆様が1日も早く平穏な生活ができますように)している。
- 自分に出来ることを探す。自分の行動が他人に与える影響を意識して行動するようになった。選択肢があるなら、世の中のためになる方を選ぶ。少しでも東北の利益になるなら、東北産の品物を買う。
- 何も考えないで暮らしてきたことへの怒りを持つ。政治、東電などをはじめとしたもの達への怒り。世界をどう変えていけばいいのか?と考えるようになった。
もちろん、これだけの大災害は人々の心に大きな傷を残す。「無常観」ともいえる価値観の変化を指摘する人がおり、原発や放射線に対する不安をもつ人は多い。そして不動産投資に対する不安の声も見られる。【無常観・不安感】
- 「物」に対する価値観が変わった。以前には感じなかった無常のようなものを強く感じるようになった。
- 絶対はないと言う思いが強くなった。
- 人の命のはかなさを改めて知った。そのことを認識した上で、東北地方の人々が示してくれているように、一生懸命に生きるのが人間本来の姿であるという思いでいる。
- 涙もろくなった。
- 地域的に離れて案じているが、世界中がこれほどまでに日本を心配していることの方が驚いた。現在でも報道に動揺して涙する。反面政治の行動力のなさ、野党のふがいなさにも怒りがある。
【原発に対する不安・意思表示】
- 震災により前代未聞の破滅的な原発事故に遭遇し当事者となった企業、政府のあまりにも未熟な対応、事実隠蔽にあきれ返った、幼児にミサイルボタンを預けたようなものだ。
- 原発の安全性に疑問を持つようになった。テレビや新聞などで気になる話題は、ネット等で違う観点から確認するようになった。
- 原発に関して、はっきりとした意思表示をしようと思った。
【放射能に対する不安】
- 妊娠中であるため、内部被爆をできるだけ避けるよう食べ物の産地にこだわるようになった。
- 水や食べ物の産地をより一層気にするようになった。
- 関東・東北方面で製造されている食べ物などを震災後の原発問題から購入しなくなり、買う際には産地を確認するようになりました。
- 原発事故が収束していないので、毎日窓を開放できない 洗濯物を外に干せない 布団を干せない 食材を選んで購入している 福島産はどうしても購入できない 雨にあたらないようにしている。
【不動産投資への不安】
- 不動産に対する信頼性が下がった。
- タワーマンションの購入を進めていたが、地震の揺れが大きいので今はストップしている。
- 不動産関係の仕事をしているので、これからの不動産の動きが分かりにくく困っている。売りたい物件、買いたい物件共に、様子見の状態。
(HK)