我が家に「アベノマスク」が届いたのは6月3日。緊急事態宣言の解除から一週間以上経っていた。子どものときに使ったガーゼマスクを思い出して、なつかしい。早速開封して縫製を見ると、日本製ではないとすぐわかった。着用してみると古いガーゼのにおいがした。我が家の不織布マスクも東日本大震災後に備蓄した9年前の中国製だが、においはない。衛生面の検品はなされているのか少し不安になった。ノーズフィッターはないし、面積が小さいので、感染予防効果は心許ない。顎と頬がはみ出て顔が大きく見えてしまうのも難点だ。洗濯すると匂いは消えたが、少し縮んで耳にかかる紐がきつくなった。
この布マスクを着用して国会で厳しい野党の質問に答える安倍晋三首相は、さぞ心細いのではと想像してしまう。安倍首相がマスクの全戸配布を表明したのは4月1日。最大の受注企業である興和にはすでに2月に依頼があったとのことだから、3カ月以上経っても全国には行きわたっていない。このマスクは、安倍政権といまの日本の危うい現状のいろいろな意味での象徴となっている。
まず、国内ではマスクすら確保できない日本のものづくりや調達能力の危うさ。緊急事態には品質を度外視し、不透明な調達を強行する危うさ。布マスク全戸配布などという愚策を提言をする首相側近の危うさ。PCR検査機や人口呼吸器だけでなくマスクもフェイスガードも防護服も不足する医療現場の危うさ。ことあるごとに情報開示、透明性の確保に抵抗する政権の姿勢の危うさなどである。そんな負のイメージが付着したアベノマスクを使い続けるのはやはり抵抗を感じてしまう。
一方、使ってみたいマスクがある。「ダチョウ抗体マスク」である。
京都府立大学動物衛生学研究室の塚本康浩教授によると、ダチョウは免疫力が高く、他の動物より抗体を作るのが早く、その抗体が強いという。すでに2006年の新型インフルエンザや2015年のMARSウィルスの抗体開発にも成功した実績もある。そして今回、新型コロナウイルスに対する抗体の生産にも成功したという。

ダチョウに無毒化した新型コロナウイルスの一部を注射。注射されたダチョウの体内では2週間ほどで抗体が作られ、やがて抗体はダチョウの卵にも移動して“抗体入りの卵”が産卵される。この卵の黄身から抗体を分離抽出するという仕組みらしい。ダチョウの卵は、ニワトリの卵の25倍の大きさ。メスのダチョウは、年間100個ほど卵を産むので大量に抗体を作ることができるという。
このダチョウ抗体をマスクの不織布フィルターに浸透させたのが「ダチョウ抗体マスク」である。残念ながら現在は受注急増により在庫切れ。2020年12月21日以降の随時発送になるという。 ダチョウ抗体マスクの価格は50枚入りで7500円(税込7800円以上は送料無料)。1枚当たり150円。ちなみに「アベノマスク」は約2億枚で約319億円ということなので、1枚当たり約160円。そのほか検品費用が8億円ほどかかっているようだ。