フレームワーク

「生命系」としての環境

「生命系」とは、生態系とその歴史の統合概念です。生物圏という空間的広がりと、系統という生物の進化の歴史とを統括した実体を意味しています。
私たち人類は、ガイア(地球生態系)の歴史のほんの一時期に、その一部として生命を維持しているに過ぎません。私たちの生命・生活は生命系の一部として営まれるものであり、自然生態系と調和しうる限りにおいて存続し、その環境収容量の範囲において繁栄が許されます。自然生態系と調和しえない場合は、自然に淘汰される運命にあります。
私たちの生命・生活は社会を媒介として自然生態系とつながっています。したがって、諸個人や諸機関がその社会的環境をどのように形成するかが、人類史と生命系の関係を、すなわち私たちの生命・生活の持続可能性を大きく左右します。

社会的環境と社会環境

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個人や機関を取り巻く社会的環境は、機関と機関の関係から組み立てられる「社会機構」を骨格とし、個人と機関、あるいは個人と個人の関係が織り成す「社会構造」として把握できます。基本的な社会構造のあり方は、社会機構によって規定されます。しかし、個人や機関の相互の関係性を形成する主体は人間(機関の場合にもそこに属する人間)であり、人間の相互認識が社会機構を含む社会構造の形成と変化の契機をもたらします。
したがって、個人や機関を取り巻く社会的環境の動態的把握のためには、その主体である人々の彼らを取り巻く人や機関とその関係性に関する相互認識と志向性の把握が重要になります。もちろん、自然生態系と調和することでしか人間社会が存続できない以上、人々の生態系的環境ないし生命系への認識と志向性の把握も欠かせません。この両方の認識・志向性の把握が「社会環境」に関する調査研究の重要なテーマです。

「生命・生活の再生産」の論理による主体-環境形成

環境という概念は、主体があってはじめて成り立ちます。また、主体と環境とは相互に不可分です。人間が生きることは、社会環境すなわち社会的環境ないし生態系的環境を変えながら自らを変えていく過程として把握できます。
諸個人や諸機関は、多様な相互関係の連鎖によって社会を形成し、直接に、また社会を介して生態系を形成しながら、その営みを続けています。その営みの基底にあるのは人々の「生命・生活の再生産」の論理です。日々の生活とともに次世代に命をつないでいく営みをよりよく続けるための主体形成と社会環境形成の過程。その集積が人類史の発展です。
私たちは、社会環境研究のフレームワークの土台にPeople’s Principleとして「生命・生活の再生産」の論理を据えたいと考えます。