行政、事業者・業界、研究機関等からの受託のほか、自主的な調査研究にも取り組んでいます。分野は、放射線、原子力、医療、食品、化学物質、製品安全、労働安全、生活環境、地球環境、電磁界など多岐にわたります。
リスク認知と行動に関する調査研究
リスク認知の形成要因等に関する調査
食品安全委員会は、食品安全基本法第23条第1項第7号及び第8号に基づいて、リスクコミュニケーションの実施及び関係行政機関によるリスクコミュニケーションの調整を行なうこととなっている。平成18年11月には「リスクコミュニケーションの改善に向けて」を策定し、これまでも様々な取組みを展開してきている。 一方、食の安全に対する関心の高まりともあいまって、食品添加物等の食品に関するハザードに対する一般消費者の不安感は根強い状況にある。 本調査研究事業は、これらを踏まえ、効果的なリスクコミュニケーション手法の検討に資するため、食品に関するハザードに対する消費者のリスク認知状況やリスク認知の形成要因をフォーカスグループインタビュー及びインターネットアンケートにより調査・分析し、さらにリスク認知に影響を及ぼす情報源について、情報内容の整理及び訪問インタビュー等により調査・分析することで、リスクコミュニケーションのための基礎的環境を把握した。
■公開成果物
「リスク認知の形成要因等に関する調査」 食品安全委員会
(調査研究部 薗巳晴, 吉川紀子, 堀越秀彦, 土方直美ほか)
放射線被ばくに関する一般公衆の認知に関する調査研究
放射線リスク、とりわけ医療被ばくに対する一般公衆および職業人(看護師)の認知について把握するとともに、放射線安全に関するリスク情報を国民に伝えるコミュニケーションに関する既往研究を調査 、分析した。放射線・原子力に対する認識の仕方、医療被ばくの受容性に影響を与える因子等の知見を得た。
医薬品の副作用に関する意識調査
医薬品の副作用に関する一般市民のリスクのリスク認知実態を調査。健康に対する意識、医師・病院及び処方箋に対する意識、インフォームドコンセントに対する意識、医家薬、市販薬に関する意識などを総合的に把握するとともに、他のいろいろなリスク事象との認知比較やリスク認知を規定する属性、因子の分析を行った。
送電線電磁界に関する住民意識調査
送電線立地周辺住民のリスク認知(電磁界のほか、化学物質、原子力等との相対的な関係も含む)把握、地域共生策(地域のニーズ)、ビデオ・パンフレットツールの評価等のため、立地地域住民を対象にグループインタビューおよび定量調査を実施した。 送電線電磁界に対する人々のリスク認知を分析するとともに、各種コミュニケーションツールに対する住民の受けとめ方、評価を把握し、今後の電磁界コミュニケーション対応(プログラム作成、地域交渉等)を検討した。
原子力発電所立地地域住民意識調査
原子力発電所立地地域および周辺(交付金対象外)住民を対象に、原子力発電所に関する認知(施設に対する意識、必要性、増設に関する意識、安全性、事故に対する評価、電源三法交付金等に対する意識、原子力事業者に対する認知・評価)、地域振興のニーズ、政治意識等について、多変量解析を用いて多元的な分析を行った。
原子力事業者の従業員意識調査の分析
原子力事業者の意識調査結果を分析、リスクやリスクコミュニケーションに対する認識について分析した。
リスク評価、リスク管理、規制科学に関する調査研究
医療被ばくの正当化に関する調査研究
我が国における医療行為、とりわけ検査被ばくに着目し、関連する情報収集、整理、分析等を行った。 画像診断等の放射線検査を中心として、被ばくを伴う医療行為の正当化に係る情報を収集、分析することにより、現状における正当化の根拠、評価方法や判断の実態について整理した。被ばくを伴う医療行為の正当化が、受診者をはじめとする一般に向けてどのように説明されているかについて傾向を把握するとともに、典型的な説明用コンテンツ (パンフレット)を作成した。
原子力・放射線のリスク評価に関する調査研究
原子力・放射線のリスク評価や原子力施設の事故時の被害推定等は、安全審査のレベルから市民団体の独自の評価など、さまざまな内容、精度、リスクの大きさを示すものが存在する。このような原子力や放射線に関するリスク評価に関する情報を、公開資料から横断的に収集し、比較分析した。
高レベル放射性廃棄物処分に関する論点の分析
高レベル放射性廃棄物処分に関連するイベント、国会等の議事録、書籍等をもとに、高レベル放射性廃棄物に関する論点を抽出・整理、分析した。特に市民の疑問を収集し、内容を分析するとともに、テキストマイニング手法による傾向把握と、統計的手法による発言の内容分類(規制関連、事業の進め方関連、研究関連 等)システムの学習データを作成した。
リスク認知とリスク対策費用の支払意思額に関する調査研究
一般市民のリスク認知、求める情報の種類、情報源の信頼度、リスク低減のために求める施策等について把握するとともに、仮想評価法によりリスクへの対策費用に係る支払い意思額を算定した。
中小企業における安全への取組み実態に関する調査
中小製造業における製品安全を中心とした「安全」への取り組み実態と今後の課題を明らかにするため、アンケート調査およびヒアリング調査を行い、中小企業における製品安全に関する理念、取り組みの実態、製品安全情報の共有、開示、提供、対話活動の実態などを定量的、定性的に記述した。また、製品安全への取り組みの契機・促進要因と阻害要因を分析し、今後の中小企業の「安全文化」形成・向上に向けての課題を展望した。
鉱山跡措置に関わる地域環境特性の把握
原子力事業者を取り巻く地域社会環境の特性を双方向の情報共有の観点から把握する目的で、(1)周辺地域において議会議事録等の公開資料を過去約20年にわたり分析し、地域における論点の変遷を明らかにするとともに、(2)周辺地域住民および国民のリスク認知および地域の事業者に対する意識等を把握するためアンケート調査を行った。その結果に基づき、事業者の地域との関係構築の方向性について検討した。
■公開成果物
「センター鉱山跡措置に係わる地域社会環境特性の把握」JNC-TJ6420 2004-002
核燃料サイクル開発機構
(堀越秀彦, 後藤大介, 薗巳晴ほか 共著)
日本原子力研究開発機構 研究成果閲覧・検索システム
検索条件として、表題に 「鉱山跡措置」 と入力して検索してください。
環境法令等に関する調査
「廃棄物・リサイクル」「化学物質」「自然保護」の三分野について、調査対象地域に適用される法令(国の法令、政令、省令、告示、通達、 地方公共団体の条例、要綱、指導指針等について網羅的に収集及び整理を行うことにより、関係自治体等における環境基準を把握し、環境保全業務の資料とした。
リスクコミュニケーション手法、事例に関する調査研究
リスクコミュニケーションの効果測定
リスクコミュニケーションのための会合(講義形式、ワークショップ形式)の効果を測定した。
ハザードに対する意識調査を実施し、結果から生活者のリスクに対する意識の構造を分析し、測定指標を作成した。リスクコミュニケーションのための会合を計画、実施し、参加の前後での知識、意識、行動の変化を介入試験により測定、分析した。より効果的なリスクコミュニケーションの運営方法についての知見をとりまとめた。
リスクコミュニケーション手法と事例の検討
化学物質、災害、原子力分野におけるリスクコミュニケーション及び近接する取り組み(ステークホルダーダイアログ、コンセンサス会議、参加型アセス等)事例を収集・分析し、課題を整理した。特に、原子力リスクコミュニケーションについては、相互理解と信頼醸成、意思決定プロセスへの参加手段の確保、放射線リスクの特徴をふまえた知識の共有などの側面から、課題を具体的に抽出した。
ステークホルダー参加事例調査
リスク管理等に関する社会的意思決定の場面において、ステークホルダーが関与した考えられる国内の様々な事例について調査し、事例ごとに、関与の経緯、論点、ステークホルダー関与の背景、関与の枠組み、ステークホルダーの範囲、関与の程度について分析、評価した。対象事例は、地域計画、防災、廃棄物、原子力、フッ素添加、予防接種など。
事故・トラブル等に係るリスクコミュニケーション(クライシスコミュニケーション)状況分析
原子力施設の事故、公共交通機関の事故、食中毒などの緊急時事例及び住民投票等の立地事例を対象に、報道及び文献を対象に緊急時・立地段階の状況について検討。問題の概要、経緯を整理するとともに、リスクコミュニケーション上の課題を抽出。
オントロジーを用いたリスクコミュニケーション支援に関する研究
オントロジー(知識や認知の体系を、個々の概念として定義し、それらの概念間の関係を定義したもの)を利用して、リスクに関する情報やイシューの全体像の把握を支援することと、情報の体系に自己または他の参加者の意見や発言を関係づけて理解することを支援する方策について検討した。
■公開成果物
長坂ほか(2003),「オントロジーを用いたリスクコミュニケーション支援に関する研究―高レベル放射性廃棄物の地層処分を事例として―」,日本リスク研究学会第16回研究発表会講演論文集16巻
(調査研究部 堀越秀彦 慶應義塾大学SFC研究所研究員として参加)
公共事業に関する情報提供手法の検討
公共事業についての透明性確保のため、適切なタイミングで十分かつ必要な情報提供(アカウンタビリティ)の要請が高まる中、各種公共事業や民間セクターにおける現状の取り組み事例の収集・整理・分析を行い、現状の問題点、改善点、今後の方向性を示唆。
防衛省の視聴覚広報の評価等に関する調査
防衛省の視聴覚広報(ホームページ、ビデオ)の評価、活用方法及び有用性の分析。
リスク情報の理解促進
原子力専門用語の理解度等の調査及び用語解説集の作成
原子力事業者と住民との円滑なコミュニケーションを阻害する要因のひとつに、伝える内容の難しさがある。その中でも原子力専門用語の難解さを緩和することに焦点を置き、公衆の目線に立った専門用語の言い換えを検討した。
原子力専門用語の認知度、理解度等に係る社会調査を行い、その結果を参考として、多くの人に理解を得られると思われる用語解説集を試作した。さらに、試作した用語解説集をグループインタビューによって公衆に諮り、理解促進要因、阻害要因を検討するとともに、用語解説集 を改良した。
■公開成果物
「原子力専門用語をわかりやすく言い換える検討」JAEA-Review 2009-043日本原子力研究開発機構
(調査研究部 堀越秀彦、大澤由紀子 共著)
日本原子力学会「2009 年春の年会」(2009 年3 月23 日(月)~25 日(水),東京工業大学 大岡山キャンパス)にて口頭発表
予稿
1)実施概要
2)原子力専門用語のアンケート調査
3)分かりやすく言い換える条件の検討
(調査研究部 堀越秀彦、大澤由紀子)
リスクメッセージの点検、評価、修正とガイドライン作成
住民とのリスクコミュニケーションのために作成したメッセージを、地域住民にとっての必要性、適切性、理解可能性等の視点から点検、評価、修正した。あわせてメッセージ作成に関する基本的なガイドラインを作成した。
■公開成果物
「リスクコミュニケーションのためのメッセージ作成のガイドライン」JNC-TN8410 2004-004
核燃料サイクル開発機構東海事業所
(調査研究部 堀越秀彦 共著)
日本原子力研究開発機構研究成果閲覧・検索システム
検索条件として、表題に 「メッセージ作成のガイドライン」 と入力して検索してください。
リスク及びリスクコミュニケーションに関する一般向け解説資料の作成
リスクコミュニケーションに市民の立場で参加しようとする方々を想定して、リスク及びリスクコミュニケーションの考え方を説明するための解説資料(Webコンテンツ)を作成した。リスクの概念と基本的な考え方、社会的なリスク対応の枠組み、専門家によるリスクの評価手法とその限界、一般市民によるリスク判断の特徴、リスク管理をめぐる論点、リスクコミュニケーションの意義と目的、利害関係者の範囲、リスクコミュニケーションが行われる場面と手法、リスクコミュニケーション参加者の注意点などを解説している。
日常生活のリスク解説資料の作成
日常生活におけるさまざまなリスクについて、リスクの内容や要因、回避方法や低減方法、現実となった場合の対処方法、関連する豆知識等について情報収集、整理し、一般向けの解説コンテンツ向け情報として編集した。(作成テーマ:停電、鉄道事故、ゴミ問題、紫外線、排気ガス、薬、賞味期限、がん、テロ、カード犯罪、ペイオフ、欠陥住宅、台風、火災、アスベスト、インフルエンザ)
また、各リスク情報を原子力分野との関連性を見出して提供する方法を検討した。
■公開成果物
1.リスク情報なび(日本原子力研究開発機構) > リスク箱(そのうち、該当テーマの情報内容の提供)
2.「原子力分野との関連付けによる一般リスク情報の提供方法の検討」JNC-TN8450 2004-004
核燃料サイクル開発機構東海事業所
(調査研究部 堀越秀彦、薗巳晴 共著)
日本原子力研究開発機構 研究成果閲覧・検索システム
検索条件として、表題に 「原子力分野との関連付け」 と入力して検索してください。
安全に係る大学公開講座の評価
安全をテーマとする大学公開講座評価アンケート。各講義の評価とともに、テキスト作成に向けた体系化、理解可能性等についての知見をとりまとめ。
問い合わせ
類似実績、コスト等、お気軽にお問い合わせください。問い合わせの秘密は厳守いたします。